本当にあった労働法|④管理監督者の要件と実態

「課長になったら、残業代がもらえなくなる」

「課長以上は、残業代を払わなくて良いからね」

私が新卒で入社した会社でよく耳にした言葉です。労働法を知らなかったからこそ「どういうこと?」と疑問に思いました。

今なら分かります。当該課長が労働基準法に第41条に規定された管理監督者に該当するなら労働基準法上の労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用が除外されている=1日8時間以上働いても残業代出ないよ、ということですね。

なるほど…「残業代を支払わなくてよくするために課長に昇進させたのか?」「確かに、何かと課長に昇進させたがる会社だったなぁ」等と…色々考えてしまいます。部下のいない課長とかいたなぁ、そういえば。

そもそも「管理監督者」とは何か

労働基準法第41条における管理監督者の要件とは、判例や通達で

・経営者と一体的な立場にある者

・労働時間の規制になじまない立場にある者…労働時間に対して裁量が認められている者

・その地位にふさわしい待遇がなされいている者

に該当する労働者と考えられています。

役職の名称が規定されているわけでなく、どの役職以上を管理監督者とするかは各事業場の判断で決定し、就業規則などに規定しています。その上でその役職が本当に管理監督者に該当するのかは上記要件を踏まえた上で名称にとらわれず実態を見て判断されます。

また、管理監督者は労働基準法第41条における「労働者」ですので、一般的な役員は管理監督者に含まれません。M&Aの仲介やっていたときに企業概要書に「代表取締役を管理監督者とする」と書いてくる人が結構いました。少なくとも一般的な意味での管理監督者とは異なります。

有名な判例から学ぶ「管理監督者の要件」

社労士受験生の方、或いは同世代の方。「名ばかり管理職」という言葉が広く知れ渡るきっかけとなった有名な判例がありますね。私は大学時代某有名ファストフード店でアルバイトとして働いていましたが…そこです、店舗は違いますが。何なら判例が出たのは2008年、私まだ働いていたんですよね…なんとなく、アルバイト先がざわざわとしていました。私が働いていた店舗の店長も、確かに激務で疲れていたように見えました。当該ファストフード店店長は、従業員の採用や店舗運営などの重要な役割を担ってはいたものの店舗内に限られていたため「経営者と一体」とまでは言えず、シフト補充のため長時間労働が常態化し労働時間に裁量があったとも言えず、給与もその地位に相応しいとまでは言えず、結果として店長である原告は過去2年分の未払い残業代を請求できました。

尚、当該論点は平成24年の社労士試験にも通達の穴埋めという形で選択式で出題されています。「経営者と一体的な立場にある者」「その地位にふさわしい待遇」が答えになっていましたね。

管理監督者の適切な運用に向けて

管理監督者の3つの要件のうち、特に勘違いされがちなのは先に列挙した3つ目、「その地位に相応しい待遇がなされているか」かと思います。管理監督者の規定をおいている会社はまず、どの役職以上が管理監督者にあたるかを就業規則で規定しているのですが、同時にその役職について、「役職手当を〇円支給する」と規定されています。この手当がですね…勤怠の実態にあわせて残業代を計算したときに、本来支払うべき金額を大きく下回っているなどの実態が見受けられます、注意が必要なところですね。その場合役職手当はその役職の責任に対する手当であり残業代を一部でも払ったとはみなされず、役職手当まで基礎に含めた残業代を請求されることになります。

また、会社の中には管理監督者の規定を置いていない会社も見受けられます、私個人としては好感を持っています。役職に関わらず優秀な人材には基本給や賞与で相当の給与を支払い、残業をしたなら実費で割増賃金を支払うという考え方にも合理性があるからです。

そしてもう一つ忘れてほしくないこと。

管理監督者でも、深夜の割増賃金は発生しますし年次有給休暇は取得できますよ!!

つまり、労働時間について裁量が認められている立場であっても勤怠の状況は適切に把握する必要があるということです。

「課長だから管理監督者」

「店長だから管理監督者」

そう簡単には決まりません。

「役職への昇進」、それは本来労働者の努力が報われた結果であり喜ばしいこと、労働者の幸せに繋がるべきことです。ところがそれが、実態として労働者の賃金や労働条件の低下に繋がっていたのだとしたら…。

管理監督者、規定を置くかどうかも含めて、適切に運用していきましょう。

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